福岡孝則(ふくおか・たかのり)
 
米国公認登録ランドスケープアーキテクト、Fd Landscape主宰、神戸大学大学院工学研究科建築学専攻持続的住環境創成講座特命准教授。1974年神奈川県生まれ。ペンシルバニア大学芸術系大学院ランドスケープ専攻修了後、米国Hargreaves Associates, Gustafson Guthrie Nichol Ltdを経てドイツAtelier Dreiseitl GmbH(現Ramboll Studio Dreiseitl)のPMとして中東やアジアの持続的都市・環境デザインプロジェクトを担当。「コートヤードHIROO」で2015年度グッドデザイン賞受賞



編著書に海外で建築を仕事にする2 都市・ランドスケープ編(学芸出版社)。ランドスケープデザイン誌(マルモ出版)の連載記事「Waterscape」など、水を活かした持続的な都市環境デザインに関する論考多数。


水は自然を動かし、
すべてをつなげる媒介となる
people 09:福岡孝則 / Takanori Fukuoka

 2016/03/08

「雨のみち」にまつわる各分野の人やモノに着目し、「雨」をさまざまな側面から見つめ直すクロスポイントのコーナー。今回は、ランドスケープアーキテクトの福岡孝則さんにお話をうかがいました。

(インタビュアー:真壁智治、編集・写真:大西正紀/mosaki)

 

雨を巡る土木と建築の世界

 
— 福岡さんは、どんなきっかけでアメリカに留学されたのですか?

福岡:学生のころは90年代半ばで、ランドスケープの分野では、ピーターウォーカーが注目されていました。僕はまず、農学系の大学で造園を学んだので、公園緑地の計画や植物生態系は理解できても、ランドスケープというものをどう組み立て、デザインするか自信がありませんでした。そこで、その頃はヨーロッパよりもランドスケープの教育プログラムがきちんと用意されていたアメリカへ留学をしたわけです。けれども、アメリカでピーターウォーカーのようにランドスケープと建築を一緒にカチっとつくることを学びたかったわけではなくて、その先のランドスケープの可能性を探ることがしたかった。

©the Natural History Press  ペンシルバニア大学に留学するために渡米したのが2000年代に差し掛かるころ。ペン大のランドスケープ・地域計画学科は、地球を様々なレイヤーから分析、それをランドスケープに応用するエコロジカル・プランニングを提唱し、『デザイン・ウィズ・ネイチャー』(右写真)という本で世界的に知られるイアン・マックハーグが創始者で、それを『アーバン・エコシステム』アン・スパーン(現MIT教授)が引き継ぎ、第三世代として、エコロジカルデザインを都市に応用しようと挑戦するジェームズ・コーナーが学科長で教えていました。彼はニューヨーク・ハイラインのデザインで知られますが、当時は仕事もなく毎日大学にいて熱心な教育家でした。
 ちょうどランドスケープの分野も過渡期のころ。綺麗な外構を空間や見た目としてどう整えるかということから、産業跡地(ブラウンフィールド)などが抱える問題をランドスケープとしてどう解決するかの議論が高まっていましたし、設計演習も時代の空気を反映して空軍跡地、工場跡地や工業港湾地区のランドスケープを核とした都市再生など、パブリックスペースのデザインを核とした都市スケールの戦略に関するものが多かったように思います。水を植物や微生物を使ってどう浄化するかや、雨水を集めるシステムなどの話がトレンドになりはじめたのも、そのころでした。

ペンシルバニア大学で取り組んだ、ブラウンフィールドの課題



— これまでの日本での水への関心といえば、水辺の癒しや親水性といった美学的な視点が中心で、生態系全体としての、水の循環を含めたエコロジカルな視点はありませんでした。

福岡:河川の中では、自然再生型やある程度の変化を許容する氾濫原のデザインなど、新しい取り組みが行われてきましたが、こと建築については、まだ雨水は処理するもので、緑化や生態は建築の装飾として考えられており、包括的には考えられていません。ようやく最近一部の建築家がその重要性に気づきはじめたところだと思います。
 

ベルリンのポツダム再開発 © Ramboll Studio Dreiseitl


 アメリカで大学院一年生の夏のインターン後にドイツへ旅行に行きました。そのときベルリンのポツダムの再開発エリアの真ん中にある水景施設(上写真)に衝撃を受けました。見た目は普通の建築周りの水景施設なのですが、調べてみると、街区内に降った雨水を全部ためて、浄化しながら循環再利用し15年間それだけで稼働していることがわかりました。薬も、水道水も使わずできるということに驚きました。これが水循環との最初の出会いであり、都市の中のエコロジカルデザインの一つの形はこういうものだなと体験を持って理解したのです。この屋外空間を設計したAtelier Dreiseitlでのちに働くことになります。

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水を活かした持続的な都市環境デザイン


— 考え方だけではなく、実際にデザインされたものを見られたことは大きな経験でしたね。アメリカで学ばれて、その後はどちらで就職されたのですか。

汚水処理場のランドスケープ ©Hargreaves Associates福岡:アメリカで大学院を終えて、ヨーロッパとアメリカ、両方で就職活動をしました。経済的にヨーロッパは厳しくて(給料はアメリカの半分程度)、ハーグリーブス・アソシエイツという組織のサンフランシスコ事務所に勤めました。入所当時、僕は一番下っ端のデザイナーでしたので、大きな模型をつくったり、見よう見まねで実施図面を描いたりしていました。ランドスケープとしては大きな組織事務所で人の入れ替わりも激しく、またプロジェクトの中でも常に競争に晒されていました。有名な事務所で働いているというのは誇らしかったのですが、自分の存在が小さく感じられ随分悩んだものです。
 そんな状況に数年いましたが、いろんなことが勉強になりました。雨水も集めてから、どうやって人が再び使える場所にしていくのか。見た目を美的に高めてゆく、そのバランスの取り方は学ぶところが多かったです。けれども、関わっていた巨大な汚水処理場のランドスケープなどは、肝心の水循環については、はしょって見せていたんです。そのランドスケープはまるでデモンストレーションみたいで。そういうことには、違和感を持っていました。



Gustafson Guthrie Nichol時代に担当したプロジェクト ©️Gustafson Guthrie Nichol

 その次にシアトルのGustafson Guthrie Nicholという事務所に勤めました。そこではキャサリン・グスタフソンから水についての美的なイロハについて訓練を受けました。繊細な水の使い方や地形のデザインはもちろん、広大なランドスケープデザインの構想から徹底した施工監理までを学び、本当に勉強になりました。レンゾ・ピアノが設計した「シカゴ美術館」のコートヤード(写真右上)やビル・ゲイツ邸の庭など、いろんなプロジェクトを担当しましたが、そのうちに特別な人たちだけのためのランドスケープではなく、もっと誰もが使えるようなランドスケープをやってみたいと思うようになったんです。最後に担当していたのがシアトルの歩行者空間のリノベーションで、予算もなく厳しかったのですが、みんなのための屋外公共空間をつくるというのは、意外にやりがいのある仕事でした。
 そんな想いがつのっていた頃に、市役所隣地のコンペで争っていたドイツのAtelier Dreiseitlのプレゼンテーションを地元シアトルで聞く機会がありました。ポートランドのTunner Spring Parkという、歩行者空間のレベルから1.5メートル掘り下げた位置に周辺街区から集めた雨水を水景施設として循環利用するプロジェクトをはじめとして、水を活かした持続的な都市環境デザインを反映した実際のプロジェクトが衝撃的で、色々ありましたが事務所へアプローチし、働けることになりました。

ドイツのAtelier Dreiseitlの仲間たち ©Barrett Doherty

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プロセス・時間・変化

 
 — ドイツではどのようなことが得られましたか。
 
福岡: とにかく植物も水もインフラもデザインも、都市のランドスケープをトータルで考えるということを鍛えられました。いわゆるグリーンインフラのような生態基盤をもつ、持続的な敷地〜都市までをデザインするという考え方です。
 たとえば水のことに関して言えば、社内の水のエンジニアのサポートを受けて開発前、施工後に水がどれくらい出ていくかということを計算してから敷地全体をデザインしてきますし、地形や植物についても、水を貯めたり流したり、浸透させたり、浄化させたり、蒸発散などを念頭において考える訳です。
 つまり、ランドスケープに関連する地面のパフォーマンスを高め、多機能型のデザインをするといった具合です。僕は、もともと農学部出身なので、場所の大まかな生態の構造はわかるし、植物や水など柔らかいものに対する感覚は身についていたと思います。けれども、こうして色々なランドスケープの事務所で経験を積むようになって、その地域や土地に求められているデザイン、つまりその場所に積層した生態基盤に、人工的な自然を重ね合わせながらデザインし、その中で人間が自然と関わりながら生活できる場所をつくる、という技術が自分なりにやっと理解できるようになりました。ランドスケープアーキテクトにとっては、とても当たり前の話なんですけどね。
 
— まさにランドスケープデザインが舵を切り出したエポックの時期に、福岡さんはアメリカ、ドイツの最前線で学ばれてきたわけですね。
 
福岡:アメリカの大学院のランドスケープのデザイン教育では、プロセスと時間を軸にデザインにしなさいということが、よく議論されていました。まずプロセスの骨格となるものをデザインし、それを10年かけて、30年後、50年後どうなるかということも考える。もちろんその通りにいかないかもしれないけど、そういう視点を持って計画していかなくてはいけないということです。デザインは100%コントロールするのではなく、変化を許容する余白をもつものだと。

— ある見方をすれば、建築はランドスケープよりパーマネント、ランドスケープは建築より常に変わり続けと言えるのかもしれません。そういう視点を早くから持っていたということでしょうか。

福岡:たとえば、明治神宮の森は100年前に遷移という概念をデザインしていて、当時の技術者は100年かけて変化しながら完成する多様な構造をもった森をつくることを目指していました。
 森の構造はこれでいいのですが、都市ではどうアプローチすべきか?僕が大学院の時には狭義のエコロジーではなく、人間の生活や都市の構造まであらゆることを包括するOrganizational Ecologies(組織的エコロジー)が議論されていて、あらゆる事象が微妙なバランスや関係性の上に成立しており、デザインは変化を促進するための触媒のようなものだという考え方です。大学院を修了してから、実務経験の中でプロセスと時間と変化ということは常に考えてきました。固いものと柔らかいもの、変化しないものと変化するもののバランス、調律の仕方がランドスケープの面白さなのかなと思います。パーマネントであることと変わり続けることは、ランドスケープアーキテクトが常に抱える矛盾だと思います。
 このことは建築家と仕事をする際にも影響してくる話です。建築家が設計をしていくなかで、100%空間をコントロールするのではなく、変化していくものや柔らかいものを積極的に取り込む感覚を持っていることが、これからはますます必要になっていくと思います。

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水循環への配慮が、不動産価値向上へ!? 


— ドイツでは、具体的に、どんなプロジェクトに関わられたのですか。

福岡:ドイツでプロジェクト・マネジャーとして最初に関わったのは、ノーマン・フォスターが設計した「アブダビ国立美術館」のランドスケープ実施設計です。
「アブダビ国立美術館」のランドスケープ ©Foster+Partners
 敷地は砂漠で何もないところ、美術館機能はすべて地中に埋まっていて、そこから隼の羽をイメージした、大きな白い構造体が5つ空に向かって突き出しています。その表面のコーティングによって、夜から朝にかけて気温が変化する際に、空気中の水を集めて、建築内部に取り込むのです。水がないところで、水をつくり、その水を最大限どのように使うかということへのチャレンジは、大変でしたが、非常に勉強になりました。今この建物は、施工中です。



Atelier DreiseitlのPMとして関わった中国とオーストラリアのプロジェクト ©Ramboll Studio Dreiseitl, Foster + Partners

 そのあとは中国やオーストラリアなど、さまざまな数10〜100ha規模の都市デザインの中の戦略的なランドスケープに関わりました。都市スケールのプロジェクトの流れとして、通常は建築のボリュームと配置や道路やインフラの骨格が決定されたあとに、最後にランドスケープが入っていきます。けれども、Dreiseitlがすごかったのは、水のインフラなどを核に、上流から長期的な視野にたって都市像を戦略的に提案しながら仕事に入って行く点です。
 たとえばアジアの新都市開発においては、みな上物の建築ばかりに目がいってグレーインフラがキャパシティを超え、越流水が道路を覆うなどの光景をよく目にします。ここでも、分散型の水循環に配慮したデザインを適用すると、これだけ経済的な効果があって、地下のインフラ更新費用を節約できるよ、というような提案から入って納得してもらうことも多々あります。
人々がアクセスできるソフトインフラ、自然水のプール ©Poly Plan GmbH 今までのハード・インフラはひとつの目的に対してつくられてきましたが、これからソフト・インフラの時代です。たとえばブルー+グリーン(水と緑の)インフラは、水循環に配慮した敷地計画のなかで、敷地に降った雨水を貯めたり、浸透させながら、健全な植物が育つ土壌を保ち、樹木の蒸発散作用により空気中の水分を増やしてヒートアイランドを抑えたり、生物多様性の向上に寄与します。同時に、こうしたインフラには人間が毎日の生活の中で利用し、生活の質を高める機能がある。また、50年や100年に一度の洪水を防ぐための構造物は巨大になりますが、氾濫原や遊水池を組み合わせた手法では減災効果を期待できます。こうした多様な便益と経済的な効果をクライアントに示し、新しい価値を共につくっていく感覚、そこが僕にとっては、一番面白かったですね。

— 経済的に合理的な計算として出せることがランドスケープと合わさることは、ダイナミックですね。

福岡:水循環に配慮した都市づくりは、不動産価値の向上にもつながります。
 たとえばシンガポールは約40%の水を隣国マレーシアからパイプラインを通じて購入しているんですが、次回の水契約更新時にかなりの金額を支払う必要がある。それまでにシンガポールとしてはできるだけ水を自給したいので、国土に降った一滴の雨水も活用しようということで、国土レベルの水のデザイン・ガイドラインを作成し、そこに紐付いたプロジェクトがいくつも動いています。
ビシャンパーク、シンガポールのブルー+グリーンインフラ ©Ramboll Studio Dreiseitl
 その一つにビシャン川というコンクリート三面張の排水路を河川と一体となった都市公園にリノベーションしたプロジェクト(上写真)があります。これによって周辺の不動産価値が120%も高まったそうです。同時にシンガポールの人たちにとって、これまで接点の少なかった川や水資源、緑地などの価値の認識が、これをきっかけに変わりはじめています。今ではこうしたブルー+グリーンインフラに毎日の生活の中でアクセスできるかということが、人間に健康的な生活をもたらすことを国としてウリにしています。

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グリーンインフラを適用する.日本は今がチャンス!


— ドイツでは、グリーンインフラのような視点に則って、ランドスケープをつくっていくということは、どれくらいオーソライズされているのでしょうか。
 
福岡:ドイツのランドスケープは、かなり大まかに分類すると都市スケールの欧州や国際プロジェクト中心に取り組む事務所と、国内・地域に密着した小スケールの安定したプロジェクトに取り組む手堅い事務所に二極化しています。
 グリーンインフラが欧州の機関で提言されはじめたのは、この5年ほどの話です。元々ドイツは緑地・ランドスケープ計画のレベルで、雨水管理もしっかり定義されています、それをさらにグリーンインフラというコンセプトで牽引し、気候変動による水害対策など将来的な課題に向けて水循環と緑の話をもう一度クロスさせるような使われ方をし始めています。(下写真)

ドイツ、シャーンハウザーの住宅地にある公園は、降雨時は遊水池に  ©Ramboll Studio Dreiseitl
 
— そう考えると日本において、グリーンインフラのようなものを実践していくことは、難しいように感じてしまいます。
 
福岡:日本では、新規にグリーンインフラをつくっていくことは難しいかもしれません。しかし、これから縮退にともなって派生する空地や耕作放棄地、産業跡地などをグリーンインフラという戦略のもとに考えたり、都市内の建築の屋上緑化や自転車道や歩道の整備似合わせてグリーンインフラ機能をもたせるなど、色々なやり方で実現は可能だと思います。日本特有の課題に向き合う中で、縮退時代だからこそ逆にそれをグリーンインフラ適用のチャンスと捉えることは可能だと思います。

— まさに生態学的な視点ですね。建築や不動産など、個別の話で捉えるのではなく、そこへタイムスパンの長い視点を持ったランドスケープとしての目も入れる。さらにそれらを全体の量として捉えることが大事なのですね。
 
福岡:地方の中心市街地では建築のみに着目した空き家利活用の取り組みは非常に増えてきました。空地には芝生を引いて公園のような状態にするのも悪くないですが、本当はそこにも多様なアプローチが可能です。樹林地や都市農業に向く土地もあるでしょうし、場所によっては土の性質上、水を浸透させてはいけない場所もあります。だから、そんなことも含めて空き家や空地問題を、グリーンインフラ的な視点からみんなで考えていくのは面白いと思います。少し引いた鳥のような目線で土地の変化を長いスパンで考えられるのがランドスケープの強みでしょうか。

築46年の官舎を集合住宅・商業施設へとリノベーションした「コートヤードHIROO」

 アメリカでは、グリーンインフラの定義は施設ではなく「治水」です。アメリカでは下水道と雨水の合流式が多いのですが、ポートランド市では、河川の下流域の人たちの居住エリアで豪雨後に頻繁に洪水が起き、訴訟問題になりました。これがポートランド市のグリーンインフラに対する取り組みのきっかけです。水害に脆弱な地域に効果的に作用するように、街路や街区の線から面のスケールでその場に適切なグリーンインフラを整備していきました。降雨後一時的に水をとどめて雨水の流出速度を緩和し、流出量を抑制する屋上緑化や、地面に水が浸透しやすい緑溝などグリーンインフラには、いろんな手法があります。


ポートランド市内のグリーンインフラ 

ポートランドで一番有名なのは、「グリーンストリート」です。道路と歩道の間に約80センチ程度掘り下げた植栽帯をつくり、道路と歩道の両方から雨水が入るようになっています。降雨後は一時的に雨水が貯留され、プランター内の耐水性の高い植物の根系が雨水の地中への浸透を促進させ、同時に水質も浄化します。こうしたストリートがこれが街中のいたるところにあります。
 
— グリーンインフラが面白いのは、まさにメガインフラではないとうことですね。小さなインフラで良くて、さらにそれらが束になって力を発揮できる。
 
福岡:そうなんです。水はあらゆることをつなげるし、つながる。これまでは、基本的に屋根雨が落ち、雨樋を伝って、下水道から下流へと流していきました。けれども、水を資源と捉えて発想を転換すると、地面のデザインや植物の葉から蒸発散して、雲に戻るまでのプロセスをデザインすることに可能性があるんです。

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ミニマムなグリーンインフラが集積する可能性


— 今日うかがったような話は、とても実験的な試みだと思いますが、海外には、どのようなトライしやすい環境があるのでしょうか。
 
福岡:たとえばアメリカでは、パイロットプロジェクトといって、プロジェクトごとに助成金がつきます。それに挑戦して成果が出れば、またそこへお金が付く。日本では完璧にできるかどうかどうかを判断して、決定がされるようなことも、アメリカでは見切り発車的にやってみることができます。だから、ポートランドの「グリーンストリート」なども、実際に見に行くと、全てが機能しているわけではありません。失敗もあるし、問題もある。けど、それでも進めていくし、市民はグリーンインフラの空間を経験してはじめて、それが何か理解するのではないでしょうか?
 アメリカは、最近、日本の災害に備える視点からも学びを得て、グリーンインフラを用いて戦略的に洪水に脆弱なアメリカの都市を、さらに見直していこうと取り組んでいるようです。その内容がニューヨークやポートランドなど、都市ごとに違う戦略を打ち出して、競争しあっています。だから都市がダイナミックに変わっていくきっかけにもなっています。
 先ほどもお話した通り、日本が同じことを行うことは、難しいかもしれません。日本は狭小で地形も急峻で降水量も多いから、できないでしょと言われることも少なくありません。けど、ミニマムな試みからはじめることはできる。それらがまとまっていくためには、建築そのものが果たす役割は、大きくなると考えています。一つひとつは小さくてもグリーンインフラ的に一緒に考えることはできる。植物も水も建築もクロスオーバーさせて次のステージに行くことが、まさに今起きはじめていると思います。
 
— 今日、お話をうかがって思うことは、新国立競技場のことでした。木の活用が義務づけられましたが、まさに雨・水に対するグリーンインフラ的な発想もそれに加わっていなければならないと思います。使わないときのほうが多い施設ほど、長いレンジでのグリーンインフラ的な展望が必要なのですから。ここで語られた変わるものと変わらないもの、固いものと柔らかいものが共存するこれからの建築の姿を新国立競技場に見たいと願っています。今日はありがとうございました。

2015年12月7日(月)収録



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